GOLF LiViNG KOGA

「クライアントの価値創造への貢献」「クリエイターの生涯価値の向上」を事業コンセプトとする、クリーク・アンド・リバー社(C&R社)。そのコンセプトを体現する活動の一つとして、建築プロデュース事業を展開している。同社に登録した設計事務所、建築士などと建築プロジェクトの的確なマッチングを図り、双方の価値を最大限高めるという取り組みである。

その第1号案件として、2015年10月、日本初ともいえる〝ゴルファーズ・マンション〞「G O L FLiViNG KOGA」(茨城県古河市)が完成。本物件のプランニング、設計を担当した建築士の細村研一氏と須貝重義氏、C&R社建築事業部ディビジョン・マネジャーの日高浩一氏に、完成までのプロセス、その意義や成果を聞いた。

建築士と管理会社、C&Rの力を三位一体化

日高 このほど完成した「GOLFLiViNG KOGA」は、建築プロデュース事業の中の一つの取り組みである「3+(ミタス)プロジェクト」の記念すべき第1号案件となりました。このプロジェクトは、全国賃貸管理ビジネス協会さんと当社が組み、同協会加盟の管理会社と当社に登録する建築士のマッチングを図り、物件オーナーのニーズに応じた最適な賃貸物件を提供するという取り組みです。建築士のアイデアやデザイン力と管理会社のリーシングノウハウ、当社のプロモーション力を三位一体化させ、高品質かつ差別化された収益力のあるオーダーメードの物件をご提案できるという、画期的な試みであると自負しています。

細村 そのとおりだと思います。

日高 当該案件の話が舞い込み、オーナーと管理会社のニーズを確認しに伺いました。高齢者向け住宅として運営されていましたが、経営状態はいまひとつ。管理会社も業態転換を考えていました。また、築13年でまだきれいな建物であり、「3+プロジェクト」ができたのなら賭けてみようと声をかけていただいたという経緯です。さっそく当社で3組の建築士を選び、コンペのかたちにさせてもらいました。

須貝 そういえば、どんな基準で3組を選んだのですか?

日高 オーナー、管理会社のニーズを満たすであろう提案力と、提案のバリエーションを重視し、年齢や性別、過去の実績、建築への指向などで判断してお声かけしました。

細村 C&R社から指名してもらい、話を聞いてぜひやりたいと思いました。しかし、多忙にしていたことと、リノベーション案件だったこともあり、それが得意な須貝君にも加わってもらうことにしたのです。須貝君は自らシェアハウスを経営するなど不動産領域にも強く、彼の知見がいい提案につながると確信しました。

須貝 細村さんは隈研吾建築都市設計事務所勤務時代の先輩で、独立後は細村さんの事務所でしばらくお世話になったという仲です。私は隈さんの事務所の後、リノベーションが得意なブルースタジオにいたことがあり、数多くの物件の再生にかかわりました。稼働率が低い物件に付加価値をつけて収益力を高める事業に専門的に取り組んできたので、今回、細村さんから誘われて二つ返事で快諾しました。

細村 窓口は一応私の事務所スタジオ・エイチ・プラスが務めましたが、参画者としてはあくまでも須貝君との連名でお願いしました。


広い共用スペースを同じ愛好者が使うシェアハウスに

日高 まずは物件の図面をお渡ししましたが、その時どう感じましたか?

細村 あり得ないほどに共用スペースが広く、しかも潤沢で、特殊な物件だと思いましたね。高齢者向けということで、車椅子利用も想定したと思われる2m幅の廊下とか、広くて天井も高い厨房とか。逆にいえば、維持費が高そうだな、と。その削減もポイントだと感じました。

須貝 私はゴルフが好きなのですが、立地が〝ゴルフ銀座〞と呼ばれるほど周辺にゴルフ場が多い場所であることはすぐピンときました。図面をデータ化しながら、その広い共用スペースをゴルフ練習に活用できるのでは、とひらめいたのです。図面をもらったのが14年の年末で、年明け早々現地調査に行った時は、そのイメージを確認することを目的としました。

日高 〝ゴルファーズ・マンション〞というアイデアが生まれた瞬間ですね。

須貝 ブルースタジオ時代、シェアハウスを手がけたり、郊外物件のリーシングに苦労した経験がベースになっています。シェアハウスは、料理好きのための家庭菜園つきとか、子育てをシェアするといった特定の目的を持った人が集まるわけです。そこには波長が合うようないい空間が生まれ、かつ共用スペースを大事に使ってくれるんですね。さらに、セキュリティ性が高まる効果もあります。この物件は各部屋に水回りがついているので厳密にはシェアハウスではありませんが、ゴルファーのためのシェアスペースを設けた物件にすればいけるのではないかと。また、そんな物件は「駅から徒歩何分」といった探し方ではなく、「その物件があるからそこに住む」という優先順位になる。特徴を設けることは、リーシングにも有利に働きます。

細村 この物件がある古河市は都心から1時間半くらいの距離です。人口は十数万人ですが、周辺の地域の住民ももちろんターゲットになり得ます。また、東京に住むゴルフ愛好者が週末利用のセカンドハウスとして借りることも期待できる。そもそもゴルフは、老若男女が楽しめるスポーツで、収入レベルが比較的高い方が多いですから、高めの家賃設定も可能。私も須貝君のアイデアは最適だと思いました。


建築士とオーナーの双方に大きな意義をもたらすマッチング

日高 最初に現地を見学した時、細村さんはどう思われましたか。

細村 共用スペースの広さを見て、自分が幼少の頃に暮らしていた共同住宅を思い出しました。そこではちょっとした広場で住人同士がよく井戸端会議をしていて活気がありました。ここもそんなふうにしたいなあ、と。そのためには、やはり共用スペースをどう有効活用するかがカギです。一方、各部屋はきれいで手を加えなくても済みそうでしたから、共用スペースに予算を集中的に投下してリノベーションすることとしました。そうして須貝君とアイデアをすり合わせながら、立地的にも物件的にも、ベストなプランが出来上がったと思っています。

須貝 まずロビー部分をゴルフ愛好者が集うラウンジにしました。大型テレビでゴルフ専門チャンネルが見放題、ゴルフ雑誌も並べて楽しめるように。天井が高く床が低い厨房は、そこならドライバーが振り回せると(笑)、シミュレーターを置くスペースにしました。広い廊下にはアンジュレーションのある数種類のパター練習場やアプローチ練習場、屋外にはバンカー練習場も設けています。もちろん、キャディバッグロッカーも完備。さらに、1階の7部屋の庭には各戸専用の〝練習ゲージ〞を設置しました。

細村 この〝練習ゲージ〞には、庭の草むしりも各住人にやってもらい、オーナーの手間を少しでも軽減化するという狙いも込めているんですよ(笑)。

日高 今回、3組の建築士にプレゼンしていただき、オーナーと管理会社によって細村さん、須貝さんのプランが選ばれたわけですが、決め手となったのは収益可能性だけではなく、管理負担が軽くなる点も評価。シミュレーターも手間はかからないですし、「共用スペースは、趣味を同じくする住人がきれいに使ってくれる」という話にも説得力がありました。他社の2案にも可能性を感じましたが、完成後の運営面に少し難しさがありました。

須貝 ゴルフ、というアイデアに目を丸くされていましたね(笑)。

日高 オーナーはゴルフをされないそうですが、保育園も経営されていて、園児たちにパターゴルフをさせるなどして親しみはあったようです。本物件は15年11月に新装オープンし、徐々に入居者が決まり始めています。中には、引っ越したばかりのマンションから、ここに移ってきたゴルフ好きの50代女性も。また、ゴルフ雑誌や新聞、ネットのニュースサイト、テレビ番組の『王様のブランチ』などにも取り上げてもらい注目を集めつつあります。お二人は、改めてこの試みをどう評価されていますか?

細村 我々のような数人の小さな事務所は、なかなか効率的な営業ができないので、自分たちの特性を理解して、設計案件を持ってきてくれるC&R社さんには本当に助けられています。

須貝 リーシングに苦労している地方のオーナーや管理会社と、発信力の弱い小規模の建築士をこうしてマッチングする取り組みは、双方に大きな意義をもたらしていると思います。また、C&R社さんのメディア発信力も、オーナーや我々にとって大きな力になると思います。


物件概要

物件名/GOLF LiViNG KOGA
所在地/茨城県古河市旭町2-9-4
構造/鉄骨構造地上2階建て(居室20室)
敷地面積/2195.39㎡
延床面積/1546.37㎡

建築年/2002年4月
リノベーション完了/2015年10月
企画/株式会社クリーク・アンド・リバー社 株式会社オクスト
設計/有限会社スタジオ・エイチ・プラス 株式会社シグアーキデザイン
撮影/建築写真家 田岡信樹


PROFILE

細村研一

1979年、工学院大学建築学科卒業後、天野建築設計事務所入社。87年、空間研究所(代表 隈研吾)設立と同時に入社。9 0 年、隈研吾建築都市設計事務所設立と同時に移籍。2004年、有限会社スタジオ・エイチ・プラス設立。一級建築士。

須貝 重義

1997年、東洋大学工学部建築学科卒業後、英国ブライトン大学建築デザイン学科、同大学同コースディプロマで学ぶ。帰国後、隈研吾建築都市設計事務所、ブルースタジオ、スタジオ・エイチ・プラスなどを経て、2009年、株式会社シグアーキデザイン設立。一級建築士。