【With corona 時代の建築】~コロナショックで建築がこう生まれ変わる~
「コロナ時代の住宅」 五十嵐 太郎
コロナ禍は、すでに始まっていたオンライン化をいやおうなしに加速させた。
もともと筆者は大学の業務以外の、すべての原稿執筆は家でやっていたが、現在は講義もゼミも委員会も自宅でできる状況に変わった。が、多くのオフィスワーカーは、通勤の必要がなくなり、家で過ごす時間が格段に長くなったはずである。
最近、オフィス・チェアを調べていたら、やはり品薄になっており、自宅用での購入が増えたからではないかと思う。
今後、ウイルスとのつきあいがどうなるかはわからないが、やってみれば、家でもできることの多さに気づいた後は、完全に以前の状態に戻ることはなく、ある程度、在宅ワークのスタイルは残るだろう。そうなると、外で働くという前提の住環境は変化が求められるはずだ。もちろん、家で過ごす時間が増えるのだから、ただ帰って寝る場所ではなく、もっと快適な空間が必要となる。
そして家でも仕事をしやすい空間を整備したくなるだろう。それはシンボリックな書斎ではなく、実際に機能する小さな仕事場である。つまり、ル・コルビュジエらが提唱したような、家と仕事場は別のエリアに区分けするという近代都市の大きな前提は崩れてしまう。新築であれば、最初からそれが与件となるケースが増えるだろうし、既存の住宅でもリノベーションが検討されるはずだ。
コロナ時代はまず住宅が変わり、それがオフィスに影響し、やがて都市も変えるかもしれない。
*【トークイベント】五十嵐太郎『ポストコロナ時代に東京の建築はどうなるか』
新教養主義的オンライン読書会+トークイベント vol.1
https://wirelesswire.jp/2020/05/75479/
*artscapeレビュー
https://artscape.jp/report/review/author/1192004_1838.html
*五十嵐太郎研究室
https://igarashi-lab.tumblr.com/member
五十嵐 太郎
1967年生まれ。建築史・建築批評家。
1992年、東京大学大学院修士課程修了。博士(工学)。現在、東北大学大学院教授。
あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「窓展:窓をめぐるアートと建築の旅」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2018年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。
『建築の東京』(みすず書房)、『モダニズム崩壊後の建築ー1968年以降の転回と思想ー』(青土社)ほか著書多数。